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最高の思い出

==最高の思い出==

「昨日で主人が完全に
仕事をリタイアしたんです!」

玄関に入るなり、声を弾ませて
そんな報告をしてくださったAさんは、
私のカウンセラー時代からの
クライアントで、
サロンができる前から通ってくださっている
最古参のお客さまです。

長年、海外に単身赴任をされていたご主人は
定年直前に就いた子会社の社長から、
本社の役員へ返り咲くという
異例のオファーを受けたのに 、
それを断わって
この春、63歳でリタイアを決めたのです。

その理由は…会社員時代
ご家庭にどんな問題が持ち上がっても
ずっと妻ひとりに家を任せて、
一緒にいてあげられなかったことへの
贖罪の気持ちからだったと聞いています。

ご主人の単身赴任中、
Aさんが抱えてきた
ご家族の問題やその苦悩は、
ここには書けませんが
本当に大変なものでした。
一人でそれに向き合ってきた
妻に対するご主人の気持ちが
よく表れているエピソードがあります。

3年前、
ご主人の大学のゼミの同期が集まり
還暦記念の会を開いた時のことです。

そこで「会社人生の最高の思い出」を
一人ずつ話そうということになり、
皆が口々に
海外でのビックプロジェクトを
成功させたことや、
長年開発してきた商品が
記録的ヒットした時のことなどを
熱く語るなか、
最後に「おまえは?」
と聞かれたご主人は…

「そうだなァ…
僕の会社での最高の思い出は、
そこで妻と出会えたこと
それに尽きるな」
と答えて、
あたりをシーンとさせたのだとか。

その会に出席していた彼の親友は
帰宅するなりご自分の奥さまに
「オレ、なんであそこで
『そうだよな』ってあいつの肩を叩いて
同意してやれなかったんだろうって
今、すごく後悔している。
あいつの会社人生のすごい業績も、
海外での人一倍の苦労も成功も
全部オレは知っている。
それなのに、本人の口から出たのは
『会社での最高の思い出は
そこで妻と出会ったことだ』
の一言だよ。
オレ、頭を殴られたみたいになって
何も言えなくなっちゃったんだよ。」
と、話したのだそうです。

翌日、その奥さまからの電話で
そんなことがあったと知ったAさん
「『私一人にすべて押しつけて、
なんであなたは仕事に逃げられるの!』
って恨んだ日もあったけれど、
その言葉を聞いて
恨みなんか全部吹き飛んで、
涙が止まらなくなってしまいました。
主人とあの会社で出会えたこと…
そして、こんな言葉をもらえたこと…
私にとっても、
一生忘れない最高の思い出です」
涙ぐみながら、そう話すAさんのお顔を
3年経った今でも、私はよく覚えています。

Aさんと2人、
そんな思い出をひとしきり話した後
Aさんはいずまいを正して
「今朝は主人が玄関で
私を見送ってくれたんです。
長年私が見送ってきたので変な感じでした。
そして私に
『後のことは心配しないで、
ゆっくりしておいで。
そして櫻井さんに、長年妻を支えてくれて
ありがとうございます。
あなたのおかげで、妻はあの時期を
乗り越えられました。
これからは、私がいないストレスから
私が家にいることのストレスに
変わるかもしれませんが
これからも、どうぞ変わらず
妻を、よろしくお願いします。
と、伝えておいてくれないか』
と言ったんです。
テレ屋の主人にしたら、精一杯の言葉です。
ですからどうか、
これからもよろしくお願いいたします」
そう言って、
頭を下げてくださったAさん…
その姿に、お会いしたことがない
ご主人の姿が重なり
胸がいっぱいになりました。

私にとっても忘れられない
最高の思い出…
それをくださったAさんご夫妻の
これからの人生が
幸せに充ちたものであることを
心から祈らずにはいられません。

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